Vol.258 『本能寺ホテル』
TOHOシネマズ新宿にて『本能寺ホテル』を鑑賞。綾瀬はるかさん、堤真一さん主演のSF時代劇。
結婚を間近に控えた繭子は京都で不思議な雰囲気を持つ本能寺ホテルに宿泊する。繭子がそのホテルのエレベーターを降りると、そこはホテル内ではなく戦国時代の本能寺であった。森蘭丸、そして織田信長と出会い、親交を深める繭子。しかしその日は本能寺の変が起こる、まさにその日であった……。
タイムスリップものというと、基本的には時代を超えたまま、最後に現代に戻ってくるというのが定番ですが、本作では何度か行き来する物語となっています。
職をなくし、自分の意見もほとんどなく結婚しようとしている繭子。天正では信長、平成では婚約者の父親と対話するうち、惰性に流されて生きている自分に気づき、できることをするのではなく、やりたいことをするという決意をする。そんな繭子の成長物語が本作の主軸です。
そんな繭子とのふれあいによって、信長もまた、なんのために天下統一を目指したのかという考えに立ち返ります。家臣が幸せそうに見えないという繭子の指摘によって、自分が目指した理想像との差を感じる信長が、本能寺の変を前にして思うこととは。
後世に伝えられている信長の姿からすると、本作の信長は少しイメージが違います。そもそも信長像というのは死後記された「信長公記」が元になっているので、筆者の主観・創作などもあるでしょうし、本作で登場するような信長であっても不思議ではないのですが、いわゆる信長像を想像していると違和感があるかも知れません。
物語としては繭子の成長物語がメインとなっているため、信長側の描写が少し散漫に感じます。個人的には本能寺の変前日の姿がもっとどっぷりと描かれているのだと思っていたので、拍子抜けしたという感じでしょうか。クライマックスとなる本能寺の変が、オープンセットに実際に火を付けての撮影でCGにはない迫力があるだけに、もっと信長側を描いてくれたらなぁというのが素直な意見です。
エンターテインメントとして『本能寺ホテル』というタイトルの物語に何を望むのか?ということになるんだと思いますが、私が観たいと思っていた話とはちょっと違ったというところですね。
歴史を知っている現代人が過去にタイムスリップし、過去の者がその事実を知ったときに起こる科学反応。はたして歴史は変わるのか? 歴史はどう動くのか? その結果どのような歴史が紡がれるのか? この、もっともおもしろくなるはずの要素が弱い。信長から影響を受けた繭子の話よりは、信長の物語が観たかったなと。
全体としては、気楽に観られる娯楽映画という感じではあるので、戦国タイムスリップものという期待値を持って観なければ楽しめるのではないでしょうか。
『本能寺ホテル』は、現在ロードショー中です。
©2017 フジテレビジョン 東宝 ホリプロ
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