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Vol.42 『さらば宇宙戦艦ヤマト ~愛の戦士たち~』

さらば宇宙戦艦ヤマト ~愛の戦士たち~観賞映画振り返りコラム12回目は1978年公開の『さらば宇宙戦艦ヤマト ~愛の戦士たち~』。前作『宇宙戦艦ヤマト』のときにものすごく混んでいたことを教訓に、今回は浅草東映パラスで観賞。確か弟を連れて観に行ったと思いますが、初日なのにゆったりと観られました。
1978年の配収で5位(邦画としては2位)の21億円を稼ぎ出したこの作品は、1989年『魔女の宅急便』に抜かれるまで劇場版アニメとしてトップでした。入場料金の上昇を考えに入れるとこれはものすごい記録です。この作品をきっかけにアニメが邦画の一つのジャンルを確立したのもうなづけます。


テレビシリーズのダイジェストだった前作に比べて、最初から劇場版で企画されたことにより、上映時間に合わせたシナリオとなったのがよかったですね。また、作画もクォリティが統一できていました。今でこそやはり古い感じはしますが、当時はその絵に驚きました。ドッグに停泊しているヤマトの大きさも感じられましたし、海中から浮上する発進シーン、彗星帝国の巨大都市要塞、超ど級戦艦の巨大さ……どれも、それまでのアニメからイメージする映像を超えていました。
最新鋭の宇宙戦艦アンドロメダの拡散波動砲すらダメージを与えられない敵に戦いを挑むヤマト。その壮絶な戦いの中、土方艦長、佐渡先生、徳川機関長、山本、真田、斎藤、坂本……そして森雪……次々と命を散らすクルーたち……子ども向けのアニメではありえないシリアスな展開に、アニメという表現方法の可能性をみた気がします。実写で実現しにくかったり、絵だからこそできることなど、アニメという手法を使うことによって新しい映像を実現できるのではないかと。
たとえば時代劇や戦争物。セットを作り、衣装を揃え、多くのロケを行う必要があるそういった分野は製作費がかかりすぎるために敬遠されがち。最近は武将ものが流行しているにも関わらず、テレビでやっているのはNHKの大河ドラマだけ。ああいうきちんとした原作・脚本を用いてアニメを作ったらきっといい作品ができると思うのですが、アニメ化されるのはコミック、ラノベ、ゲーム原作ばかり。25年以上も前にこの作品が新しい道を切り開いてくれたのになぁという気がします。
話がずれました。ヤマトに戻りましょう。この作品では前作の敵であったデスラーが再びヤマトに挑戦してくる下りがあります。個人的にはここのシーンがいちばん気に入っています。というのは、人が死ぬことで感動を与えようとする邦画独特のアプローチというのはあまり好きじゃないんですよね。
これがハリウッド映画だったらみんな生き残ってハッピーエンドになってるぞ?と。それがいいというわけではありませんが、人の命を用いて感動させようとするのは少し安易だなと思います。もちろんこの映画はそれを超えた感動も与えてくれるのですが。
古代をかばってミルの凶弾に倒れる雪を見たデスラーのセリフ「彗星帝国に身を寄せていたとはいえ、私の心ははるかに君たちに近い」。地球人もガミラス星人もなんのために戦っているのか。ラストシーンで提示される命の使い方。沖田艦長が言うわけです「お前はまだ生きてるじゃないか」と。どんな人間もいずれは死ぬ。しかしその命をなんのために使うかがとても重要なことなのだとこの作品は言っている気がします。
ヤマトはこの後テレビシリーズでこの作品と違う結末を描き、その続きがさらに作られていくわけですが、私の中ではここでヤマトの本編は終わりととらえています。すべてが終わり、沢田研二の「ヤマトより愛をこめて」のイントロが流れる中、スクリーンに映し出された字幕“ヤマトはもう帰ってきません”……これで完結。以降の作品は別の話だと思っています。
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