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Vol.254 『君の名は。』

TOHOシネマズ日本橋にて『君の名は。』を鑑賞。米Variety誌が「2016年に注目すべきアニメーター10人」に選んだ新海誠監督の最新作。

東京暮らしに憧れる、田舎町で暮らす女子高生・三葉はある日、自分が東京の高校生になる夢を見る。一方東京の男子高生・瀧も知らない山奥の町で女子高生になる夢を見る。やがて2人はそれが夢ではなく、心と体が入れ替わっていることに気づく。そして、2人の気持ちが打ち解けてきたころ、入れ替わりは前触れもなく終わりを迎える。三葉との特別なつながりを感じていた瀧は三葉に会いに行くことを決心するのだが……。

君の名は。

そこに描き出されていたのは等身大の高校生。特別な能力を持つわけでも、何かに秀でているわけでもない、ごくごく普通の高校生の男女2人の日常。そこに入れ替わりという非日常的な要素が加わって進行していく物語であるのに、観客側は自然な話のように受け入れられます。

昔からよくある、ちょっと不思議な世界を描いたジュブナイル、そして日常と密接した形のSF。派手にドンパチやるだけがSFではなく、日本の映画はそういったSFのほうが合うのかも知れません。

君の名は。

そしてその情景を彩る、空気感あふれる美術。新海監督の作品はどれも美術がすばらしいのですが、それは精密でリアルなせいだけではなく、そこにある空気まで含めて暖かくほっとする空間が描かれているからです。

三葉の憧れる東京も、夏の空気を感じる描写で、ただコンクリートの固まりのような街ではなく、必ず緑が入り、全体に黄色みを感じるような美術となっています。そして三葉が暮らしている田舎町は、誰もが日本の原風景と感じるようなのどかさの中に、本当にそこにありそうな習わしや日常生活が構築されていて、その世界観作りと美術が一体となって訴えかけてきます。

君の名は。

物語は、それぞれ知らない世界に暮らす三葉と瀧が、最初は戸惑い、反発しながらも、徐々に打ち解けていく姿が描かれ、その先に待っているであろう恋物語を予感させるわけですが、瀧が三葉に会いに行くところから話が急展開していきます。

その話の持っていき方も強引な形ではなく、ただし、インパクトを持った折り返し地点になっているのがすごくよかったと思います。どこか無理矢理に緊迫感をあおるエピソードをねじ込んで主人公たちが巻き込まれていく……それまでの流れをぶったぎってクライマックスを演出する作品が多い中、本作の“転”にあたる部分は非常にスムーズで、それでいて、観客を物語へさらに引き込んでいく効果の高い演出になっています。

主人公2人を結ぶ運命の糸。そして、この物語の後、2人が過ごしていくであろう時間の想像。観終わった後、ほんのりと淡い、そして甘い空気を感じたのは私だけではない気がします。誰もがなんとも言えない、穏やかで暖かい気持ちになれる、そんな作品です。

君の名は。

さらにいうと、観終わって時間が経つほど、じわじわと胸に迫る何かを残してくれる作品。観終わった直後よりも、後で思い返したときのほうが、その良さが広がり、再度観に行きたくなる作品。主人公たちと同世代の方はもちろん、10代というかけがえのない時間を過ごしたすべての人にオススメしたい。大人にとっては、どこか共感し、郷愁を覚える映画です。

『君の名は。』は、現在全国ロードショー中です。

(C)2016「君の名は。」製作委員会

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