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Vol.163 『連合艦隊』

連合艦隊観賞映画振り返りコラムの61回目は1981年に観た『連合艦隊』。一般試写でイイノホールで観ました。
真珠湾攻撃による太平洋戦争の開戦から、ミッドウェー海戦を経て敗戦の道を進んでいく日本海軍。レイテ、そして大和の沖縄特攻作戦までの戦争の流れを縦軸にしながら、歴史に翻弄された2組の家族、特に親子の物語をオールスターキャストで描いた作品。中井貴一さんのデビュー作でもあります。


企画としては前年の『二百三高地』の大ヒットを受けて、二匹目のドジョウを狙ったことがありありとわかる作品。主題歌もさだまさしさんに対抗するかのような谷村新司さんでしたし。
しかし内容はとても重厚で、『二百三高地』と同様に、歴史に名を残した人々が主役ではなく、あくまで一般の人々が自分の想う人々を守るために戦地に赴き、無情にも亡くなっていく姿を描いています。戦時中の価値観というのは、このような映画などの物語を観てわかったような気はしていますが、本質は決してわかっていないということを教えられます。
兵士となることを喜んでいたが、それが結果的に息子を死へと追いやる結果となることを悔やむ父親。そしてその父親を気遣い、親より後に逝くことを親孝行とする息子。話としてはフィクションではありますが、戦争の影で繰り広げられたであろう様々な人間ドラマの一端をかいま見せ、今の日本は多くの方々の犠牲の上になりたっていることを改めて突きつけてくる、そういった作品です。
太平洋戦争にまつわる映画はいまでも作られていますが、あの戦争からすでに70年が経過し、その記憶は徐々に薄れていることは否めません。記録としては残っていても記憶として実際に体験した方々の数も減ってきています。そういった意味で、1980年代に作られた戦争映画は、その時代を生きた方々の体験、それから想いが投影された作品として新しい世代にも観て、引き継いでいってほしい作品です。
この映画のために1/20スケールの戦艦大和が製作され、撮影に使われました。その迫力がすごいというふれこみの宣伝がたくさん流れたことを覚えています。しかし、観たときの感想としては、まあがんばってるけど日本映画の技術はまだまだだなという感じでした。映画の前半部はこれまでに作られた映画からの流用が多く、今回の大和が登場する映像に関してもその技術が進化したようには見受けられませんでした。
日本の怪獣映画だったら最初からそういうつもりで観るのでいいのですが、リアリティを出すために1/20スケールの模型を作り迫真の映像がという売り込みをしている以上、このレベルの映像ではいただけません。
現在のCGを使った映像に比べたら30年も前の映像だからという人がいますが、その当時のSFX技術としてもどうかなという感じ。ハリウッドではSF映画がたくさん作られ、『スター・ウォーズ』などをすでに観ている時代。そこにこのミニチュアと合成技術の映画を自慢されてもという感じでしょうか。
円谷英二さんが水や火などはどうしようもないと言ったことがありますが、ミニチュアとして縮小したくてもできない粒子でできているもの、水、火、煙などがどうしてもそのミニチュアの縮尺より大きく見えてしまうんですよね。大和の戦闘シーンで立ち上る水柱などが実際の大きさに見えてしまい、結果、大和が小さいことがわかってしまう。
また、実物大の高射砲などのセットについては緻密に作られているものの、その背景となる戦闘機が飛ぶ空などとの合成がいかにもという感じ。アメリカ映画のブルースクリーンによる合成映像などに比べてあまりにもひどかったですね。これが日本映画の限界なんだなという印象をそのとき持ちました。大和の轟沈シーンはさすがに迫力ありましたけど。
作品としてはとても印象に残る内容でしたし、観賞直後のインパクトとしては本当に大きく、試写を観ている間に降り始めた雨の中、傘もささずに帰った記憶があります。あの時、雨の中、何を思って歩いていたのかはすでに覚えていませんが。
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