Vol.282 『劇場版 ウルトラマンジード　つなぐぜ! 願い!!』

マスコミ試写にて『劇場版 ウルトラマンジード　つなぐぜ! 願い!!』を鑑賞。昨年TV放送されていたウルトラシリーズ最新作『ウルトラマンジード』の劇場版で、坂本浩一監督作品。

知的生命体を宇宙の害とみなし、星々を破壊する人工頭脳ギルバリス。その侵攻を食い止める強力な力「赤き鋼」が隠されているという沖縄にやってきたリクは、アイルと出会う。アイルはリクがジードであること見抜き、リクに重大な使命を託す。そして「赤き鋼」を求めるギルバリスがついに地球にやってくる。そのとき、自分の力で地球を守るという考えに囚われているリクの前にクレナイ ガイが現れた……。

TVシリーズで父親であるベリアルを破り、ゼロに地球の平和を託されたジード。男の子にとって超えるべき父親という壁を乗り越えたという自信と、一人で地球を守らなければならないという自負が気負いとなってしまうリクの姿が、一人の男の成長過程としてとてもリアルに感じられる本作。

これまでもメビウスのような成長物語がありましたが、本作ではウルトラマンとしてというよりは、本当に一人の男としての朝倉リクの成長が描かれている作品です。そのリクの気負い、不安、葛藤のために危機に陥るウルトラマンたちと、それを打ち破るための試練。TVシリーズから描かれてきた、ベリアルの息子という宿命を背負ったジードの物語が本作でき一区切りを迎えます。

これまでも一緒に戦ってきた仲間たちの支え、先輩としてアドバイスを贈るガイ、ジードのピンチに駆けつけるゼロとウルティメイトフォースゼロ。ジードは決して一人で戦ってきたわけではなく、自分の力を与えてくれる大切なことに気付き、また一つ男として大きくなっていく……ウルトラマンというモチーフを使って描かれる、とてもさわやかな物語になっています。

TVシリーズでは登場していないオーブ、そしてジャグラーがとてもいい形でリクたちにからんでくれます。特にジャグラーは、そのキャラクターの良さも手伝って、冒頭から最後までいい味を出しています。これまでのウルトラシリーズにはない貴重なキャラクターですよね。ガイはガイで先輩としての風格がにじみ出てますし、今後も風来坊としてふらっと登場してほしいなと思いました。

作品としては笑いの要素もあり、タトウィーンの酒場のようなシーンもあり、御嶽のような神秘的な沖縄の姿も登場。全編にわたって観客を楽しませる要素がつまった映像になっています。いろいろな宇宙人が登場する酒場のシーンが特に楽しかった。

本作は坂本監督ですから、もちろん生身のアクションもふんだんに登場。ライハやモアたち、TVシリーズのレギュラー陣も大活躍します。中でも特記したいのはゼナ先輩ですね。そのアクションの切れ、強さは一見の価値ありです。

特撮部分としては、ギルバリスが地球に送り込むギャラクトロンMark2軍団が沖縄の街に降り立つシーンの絶望感でしょうか。1機でも手強かったギャラクトロンのパワーアップバージョンが次々に現れるシーンは、その後の厳しい戦いを予感させ、かなりワクワク感がありました。

今回舞台となった沖縄はTVシリーズでも登場しましたが、あのエピソードが中城中心だったのに対し、今回はコザ周辺が登場しています。他にも浜比嘉島が出てきましたが、どうせなら海中道路あたりで戦うウルトラマンの映像が観たかったですねぇ。せっかくの沖縄なので、青い海でのアクションシーンがあったらもっとよかったかなと。

余談ですが、作品中に登場する食堂はもずくコロッケと蟹もずく天ぷら（下の写真。撮影：紅子）がとてもおいしい食堂です。ちょっと足を延ばしても食べにいって損はないと思います。この映画の影響で大勢押し寄せて混雑するとイヤだなぁ(笑)。

話がそれましたが、TVシリーズを楽しんできたファンはもちろん、本作だけでも楽しめるストーリーになっており、笑いあり、感動あり、アクションありと、あっという間に過ぎてしまう73分になっています。

『劇場版 ウルトラマンジード　つなぐぜ! 願い!!』は、3月10日（土）よりロードショーです。

©円谷プロ　©ウルトラマンジード製作委員会・テレビ東京

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