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Vol.165 『テンペスト3D』

テンペスト 第一巻 春雷マスコミ試写にて『テンペスト3D』観賞。NHK BSで放送されたドラマ『テンペスト』を3D化し、劇場版とした作品。
19世紀、琉球王朝末期。日本(薩摩)と清の両属関係となっていた琉球を舞台に、性別を捨てても国を守ろうとした一人の女性がいた。孫寧温(真鶴)。史上最年少で官吏登用試験に合格した寧温は、類い希なる政治手腕を発揮し重用されていく。しかし、陰謀渦巻く王朝内の人々、野心をもった清の宦官、さらに開国を迫るアメリカなど、琉球を取り巻く情勢は過酷極まるものだった……。


この作品は、これまであまり取り扱われたことのなかった琉球王朝の実態と、幕末期の動乱・列強の進出などに揺れる中、最終的に沖縄県として日本に組み込まれるまでを描いた歴史物語です。主人公となる孫寧温は架空の人物ですが、史実に基づいた流れをさらにドラマチックに魅せるのにとても魅力あるキャラクターとして描かれています。
頭脳明晰で的確な判断を下せる寧温に惹かれる者、利用しようとする者、絶対の信頼を寄せる者……さらに密かに想いを寄せる薩摩の役人など、周囲のキャラクターとの関係が絶妙で、役人と女性との間で揺れ動く寧温の心の葛藤がうまくドラマを盛り上げていると思います。
テレビドラマを映画の時間枠に押し込めると、どうしてもダイジェストになり、ストーリーがぶつ切りだったり、突然出てきては消えるキャラクターがいたり、話が未回収になったりということが往々にしてありますが、この作品はとてもうまく再構築されています。何カ所かはありますが、全体のストーリーとして気になりません。
逆に、連続ドラマであった分、いくつものエピソードが次から次へと連続して展開されていくので、とてもテンポがよく、2時間半という長さをほとんど感じずに一気にラストまで持っていかれてしまいます。
琉球といえば、江戸幕府初期に薩摩による侵攻を受け、その支配下に置かれながらも薩摩の思惑によって国としての体裁を残したまま王朝が存続していたわけですが、この作品の舞台となっている幕末の日本、それから外国との関係において、間接的に様々な影響があったことはあまり知られていません。
この作品内でも、琉球を隠れ蓑に薩摩がフランスから軍艦を購入しようとする下りがありますが、薩摩は他の諸藩とは違い、琉球を支配下に置いていることで諸外国の情報を得ていたり、琉球を介した間接貿易で作った資金が倒幕につながっていたりします。この作品では、主人公と薩摩の役人の恋愛が描かれますが、そうした歴史的背景を踏まえながら観るとさらに楽しめるかも知れません。
映像については、沖縄本島を中心としたロケが非常に魅力的な映像になっています。斎場御嶽といった世界遺産も出てきますし、物語の主舞台となる首里城も琉球王朝の栄華をまさに伝える舞台として随所に登場。ここまで大々的に映画で登場するのはほとんどなかったのではないでしょうか。
3Dについては、基本的に疑似映像なのでそれほどの効果はありませんが、この映画のために作られたという龍の映像は迫力がありました。左の写真の首里城の龍が動き出すといった趣向なのですが、この映像がなかなかよかったです。
一人の女性の物語として、それから、日本という国に組み込まれ、戦争などを通じて熾烈な歴史に翻弄される沖縄県の物語として、見応えのある作品です。
『テンペスト3D』は1月28日から全国ロードショーです。
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