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Vol.164 『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』

聯合艦隊司令長官 山本五十六 オリジナル・サウンドトラック楽天地シネマズ錦糸町にて『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』観賞。
戦争前夜の海軍省から前線基地視察時の戦死まで、山本五十六の物語を通じて、なぜ日本が勝つ見込みのない戦争に傾き、突入し、負けていったのかを描いた作品。戦争映画というよりも山本五十六の伝記映画といったほうがいいでしょう。


「太平洋戦争70年目の真実」というサブタイトルがついていますが、特に新しい事実などはなく、山本五十六という人物像もよくビジネス誌のリーダー論的な特集で取り上げられている内容を好意的に膨らませた内容となっており、期待して観に行くと肩すかしをくう感じです。
この作品では、政府やマスコミによって踊らされた日本国民の世論によって戦争に傾いていく日本の姿と、アメリカとの戦争に最後まで反対した五十六の姿を対比させながら、戦争に突入してしまった後の五十六の決断、考え方を描いています。
ただ、その描かれ方が非常に中途半端であり、観る人によってはかなり誤解を与えるような内容になっている気がします。真珠湾でのアメリカ空母部隊不在、ミッドウェーでの大敗、部下たちの戦死。こういった報告を受けた際にもその感情を表に現さず淡々と報告を受けていたり、将棋をさしていたりする五十六の姿。役所広司さんの演技でその心情が伝わってはくるものの、どうしてもその内面までは伝わり切れていなかったように想います。
対米開戦に反対しながらも真珠湾攻撃を立案・実行するあたりは、もっと想うところがあったのではないでしょうか。戦果を上げて、なるべく早い時期に講話に持ち込みたいという想いがあるからこその作戦であったのなら、それを選択せざるを得ない状況になったときの苦悩などがもっと描けていればいいのになぁと。
この作品で山本五十六は、部下思いで、やんちゃなところがあり、食べることが大好きな愛すべき人物として描かれていますが、三国同盟や対米戦への反対という立場が戦争に踏み切らなければならなくなった際の行動、疲弊してまともに戦えなくなっている日本軍の状況などの厳しい環境に陥ったときの苦渋の決断とか苦悩といったことがよく伝わってきません。察するに思うところはいろいろあったのではないかと思うわけですが、そこが観たかったのに感じられなかったというのが残念です。
また、入れ方がどうも雑な部分があり、その効果が薄くなってしまった話がかなり多かったように思います。たとえば広島の甘味処でのシーン、家族とのシーンなど。山本五十六の人となりを伝えるために入れたのだと思いますが、映画全体を観たときになくても成り立ってしまう。軍服を脱いだときの人物像を入れたかったのだとは思いますが、本当に必要であったかというと疑問が残ります。
さらに、当時の世情を表現するために登場する新聞記者。国民の代弁者であるように振る舞い、人々をあおる香川照之さん演じる記者と、山本五十六という人物に引かれていく玉木宏さん演じる記者。この描かれ方もすごくもったいなかった感じがします。
この玉木さん演じる新聞記者の目からみた世論という形にはなっていますが、特定の居酒屋の常連客限定。山本五十六に関しては何回かインタビューという形で話をしますがその考えを聞くことがメインで、そこには議論などはなく、その考えなどがその場では伝わってきません。こういう人物が登場するなら、最初から最後まで記者の目を通した形にしたほうがしっくりきた気がします。
人々をあおるだけあおり、戦争となることを望んでいるかのような香川さん演じる記者が、部下である玉木さんが徴兵されることを聞いたときに見せる怒り。このシーンはこの作品の中で非常にいいシーンだったと思うのですが、前後の脈絡がない。そのシーンがあって何か変わるのかと思えば特に変化はなく、香川さんの記者はそこだけ別人のような感じがしました。こうしたシーンをはさむならそれに伴うフォローがあっていいと思うのですがなんのために入れたのか……。
この作品のシナリオは、いろいろな意味で中途半端で、その答を観る側に完全にゆだねるでもなく、かといって明確な答を提示しているわけでもなく、いったい何をテーマにしたかったのかがよくわからなくなってしまっています。もう少し視点・描き方を整理できていたらまったく違う作品になったのではないかなと思いますし、そういった意味で非常にもったいない作品だなと思います。
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