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Vol.84 『イヴの時間 劇場版』

イヴの時間 act01:AKIKOマスコミ試写にて『イヴの時間 劇場版』を観賞。全6話がネット配信されたWebアニメーションで、新作シーンを加えて再編集、<1st.シーズン完全版>として劇場公開される作品です。
アンドロイドが普通の日常に入り込んでいる近未来を舞台に、アンドロイドを家電として扱う通常の社会と、人間とアンドロイドを区別しない社会<喫茶店「イヴの時間」内のルール>を織り交ぜながら、人間とアンドロイドの関係、そして人と機械の間に生まれるそれぞれの感情を主人公たちの心の移り変わりを通して描いた作品。


命令にしていない行動記録を持つアンドロイドに不審を抱いた主人公がたどりつく喫茶店「イヴの時間」。そこで見聞きし、経験することによって次第に考え方が変わっていく主人公。その心の移り変わりがとても自然に描かれている点はかなり評価できると思います。大きな事件が起こるわけでもなく、どちらかというと静かに展開されるストーリーにも関わらず、全編を通して観客を引きつける作りになっています。
この作品の中でたびたび登場するのがロボット三原則。アイザック・アシモフが提唱し、ロボットのあり方について、その後の多くの作品の基本的な考え方として扱われるこの原則。アシモフの原作を映画化した『アイ, ロボット』でも有名ですが、この作品は、根底にその三原則への挑戦があるような気がします。
ロボット三原則への挑戦は様々なクリエイターによってなされており、『2001年宇宙の旅』のHALの行動に代表されるように、そこに穴があるのではないか?と提示してははねられることが続いてきました。この作品では「三原則に、ロボットが嘘をついてはいけないとは書いていない」というセリフが出てきますが、そこが三原則への挑戦なのではないかと。
確かに言われてみれば「嘘をついてはいけない」とは書いてありませんが、「嘘がつける」機械というのはちょっと現実離れしているかなぁという気はします。家電として扱われるアンドロイドが持ち主の命令によらない行動を取ること、持ち主に嘘をつくこと、これはもはや機械ではなく生物です。その時点で、この作品ではすでに対象がロボットではなくなってしまっている気がしてしまいます。つまり三原則への挑戦はこの時点で破綻しており、そこがちょっと惜しいところ。
アニメとしては、背景の描写、人物の描き方など、とてもクォリティが高い作品です。声優も福山潤さんをはじめとして豪華キャストと言える方々が参加しており、全編質の高いアニメになっています。
しかし、個人的にはいかにもコンピュータ的なカメラの動きがうるさく感じられました。喫茶店という舞台で絵の変化をつけるための処理だと思うのですが、急速にズームしたり、逆に引いたり、対象の周りをぐるぐる回ったりといった演出が多すぎます。その演出に何か意味があるのかというと特に意味がなく、なんかうるさいなぁという感じ。
元のWebアニメーションは観ていないのですが、1話15分という尺だったらこういう演出もありなのかも知れませんが、それがつなげられて1本の長編となると、最初から最後までそういった動きになってしまうとやりすぎかなと。この作品でいちばん残念だったのはその演出です。
話の中にTHXとかLUHとか、あるいは1138というコードが出てきたりするのはSF好きとしてはにやりとするところ。『スター・ウォーズ』日本語版が上映されたとき、『スター・ウォーズ』よりも『電子的迷宮/THX-1138 4EB』を楽しみに観に行ったことをふと思い出しました。マニアックなオマージュをするなぁとちょっと感心。
『イヴの時間 劇場版』は3月6日、池袋テアトルダイヤ、春休みにはテアトル梅田で劇場公開されます。
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