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大事なのは熱意!『アップルシード アルファ』荒牧伸志スペシャル講義

2004年にその革新的映像世界で国内外に衝撃を与えた「アップルシード」の待望の最新作『アップルシード アルファ』が2015年1月17日(土)より、新宿バルト9他にて全国公開されました。
シリーズ三作目の本作の公開を記念して、この度、 IT関連及びデジタルコンテンツの人材育成スクール・デジタルハリウッドにて、未来のクリエイターに向けた荒牧伸志のメイキングセミナーを開催。特別ゲストに「アニマトリックス」、「アップルシード」シリーズ、『キャプテンハーロック』などを手がけた本作プロデューサー ジョセフ・チョウ、デジタルハリウッド学長の杉山知之を迎え、濃密なフォトリアル談義をいただきました。

アップルシード アルファ


●『アップルシード アルファ』スーパーフォトリアル CGメイキングセミナー概要
日時:1月15日(木)
場所:デジタルハリウッド 駿河台ホール
登壇者:荒牧伸志監督、ジョセフ・チョウ プロデューサー、杉山知之学長
内容:
・第一部 荒牧監督によるアップルシード アルファの特徴的な映像づくりについて(製作過程、フォトルックな CG、モーションキャプチャなど)
・本編特別映像上映
・第二部 荒牧監督×ジョセフ・チョウ×杉山学長トーク
・質疑応答
・第一部 荒牧監督による作業工程の講演
フル CGアニメーションの作り方を各工程で細かく説明。実際に使われたイメージボードやキャラクターのデザインを用いて、説明が行われた。
特に荒牧監督ならではの、作業工程を円滑に早く進める方法として
・通常絵を書いて進めていくコンテをコンピューター上でキャラクターを配置しながらコンテを進め、さらにモーションキャプチャの俳優の演技の動画をつなげてビデオコンテとして使用
・スタッフ全員に早い段階で監督の中にあるイメージを共有することが近道
と、監督独自の作業効率アップの”裏技”も披露された。
モーションキャプチャ・フェイシャルキャプチャの部分では、演技指導や取り方はかなり実写に近いと説明。俳優の演技スキルが仕上がりに大きく影響するため、モーションキャプチャ俳優のオーディションは入念に行ったと振り返った。
・第二部
では荒牧監督、プロデューサーのジョセフ・チョウ、デジタルハリウッド学長の杉山知之によるクロストークでは様々な話題が展開した。
荒牧監督にとっての“アップルシード”とは?
「いろんな意味でチャレンジがつまったものだと考えています。1作目も2作目もそれぞれ新しい映像手法で評価をしてもらっていました。今回、作品は「アップルシード」のリブートと考えていたので、リブートするんだったら、新しい映像、新しい仕掛けをつくっていかないといけないな、という気持ちでいました。常にチャレンジしていく作品だと思っています。
ハリウッドクオリティの秘密
杉山学長「「ホビット」を制作したウェタ社の方とさっき話していたのですが、制作当時マックスで1,000人で作っていたらしいのですが、本作はお聞きしたら40名程度という。まるで洋画を見ているようなクオリティをその人数で表現するのはただただ驚きです。本作は日本で作って世界に勝負していくというひとつの形だと思います」
かつてワーナー・ブラザーズで「アニマトリックス」などを手がけ、本作のプロデューサーのジョセフ・チョウ。
「アップルシードは日本はもとより海外のファンがとても多いし、熱が強い。「エクスマキナ」の時にパリで上映会を行った時に70歳くらいのおばあさまがパート1の DVDを持ってきて「サインしてくれ!」と来ていたのをみて、本当に欧米の人気が強いと思いました。ハリウッドでもジェームズ・キャメロン監督や、「アイアンマン3」のジョン・ファブロー、「エンジェル・ウォーズ」のザック・スナイダーなど、「アップルシード」ファンがビックリするほど多いです。実際に私がまだワーナーにいた頃も、アップルシードの試写を何回も社内で行って、社内でもファンが多かったほどです。
なぜそこまで海外のクリエイターやファンが熱をあげてくれるのか。それはおそらく作品が持っている職人芸的な、日本人特有のタッチや雰囲気。スキルやタッチなどそういったところに理由があるのではと思いました。そういう意味ではピクサーでも「アップルシード」は作れるものじゃないな、と思っています。宮崎アニメも一緒ですね。彼らしかつくれない、独自の雰囲気というものが日本の作品にはあるんです。そして、制作費を聞いてまた驚かされました。当時「5倍もらってもその金額では作れない」と思ったほどです。日本にはすごい職人たちが集まっている、とすごさを感じました」
日米合作の利点
ジョセフ・チョウ「そういった作品なので、もちろん海外も視野に入れた作品作りをおこないました。
従来の日本のモーションキャプチャ俳優で日本で作成したものを英語版に変えて作成すると、やはり外人からみると不自然に思えるところがあるんです。アニメの影響の強い日本だと、ちょっとオーバーアクションだったり、銃の構え方ひとつにしても、体の使い方にしても。普通のアニメでしたら良いのですが、フォトリアルでリアルさを詰めていく作品ではそういったちょっとした違和感が大きく影響してくるので、そこから改善していこうと。脚本もセリフのかっこいい方にプロットを渡して作成してもらった」
未来のトップクリエイターたちへ荒牧が伝えたいこと
「世界に向けて、という志ではなかったのですが、23、4くらいの時に日米合作の仕事でノースハリウッドにしばらくいたことがあった。その頃まだ日本のアニメを世界に発信しはじめた頃で、僕がデザインしたおもちゃが売ってるし、テレビもチャンネルまわすと日本のアニメがやってる。その状況をみて、意外にそんなに海外との距離はないな。と思ったんです。当時書いてたスケッチとかスタジオの人たちにみせると 明日から来い、みたいな勢いだったので、垣根はないのかな、と思いました。なので全然構えなくて良いと思うんです。思ってるほど壁はない。どんどんチャレンジしていって欲しいですね。私もメカデザイナーだけど、コンテやりたい、といってやってきたもで、いろんなことを貪欲にやってほしいですね」

アップルシード アルファ

●質疑応答
求める人材は?
「”熱意”のある、一緒に仕事をしたいな、と思わせる人ですね。決してベテランだけしか入れないということはないし、新人でも無茶苦茶熱意があれば一緒に仕事をしたりしています。僕らがやっていることに対して賛同してくれる方はぜひ、という感じですね」
日米制作の違いは
ジョセフ「とにかく日本よりももっと細分化がなされている」
監督「となりの部署と話せないくらい分かれてますね。なので途中で作業を戻したりというのができず、最終的に監督が「うん」というまで全部一方通行の作業、という感じです」
今後の展望
ジョセフ「もちろん国内にも目を向けつつ、グローバルに展開していきたいクオリティはまもりながら効率化していくCGで映画とシリーズで国内外でアピールしていく、というのが我々の課題」

●受講を終えた学生の反応
20代女性「表情のモデリングがすごかった」
50代男性「専門誌やメイキングビデオなどをみてきてもわからなかった制作過程が、細かな説明でしかもビジュアル付きでいただいたのでとても理解できた」
20代男性「モーションキャプチャの制作過程がすごかった!本当に撮影しているんだと思った」
20代男性「とても貴重なお話を伺えた。撮影方法やレイアウト映像なども拝見させてもらえて、とても有意義な時間でした」
50代男性「原作が好きで参加したが、製作過程を聞いてすごい世界が展開されていることがわかった。CGならではな、一味違うアップルシードの世界!」
30代女性「フェイシャルアニメーションがリアルで感動しました」
40代男性「少人数でこのハイクオリティを作り上げるのはすごい」
20代女性「制作人数4~50人!? 衝撃的!!」
『アップルシード アルファ』
2015年1月17日(土)、新宿バルト9・梅田ブルク7ほか、全国23館にて公開!
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Comic book © 2014 Shirow Masamune/Crossroad