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Vol.48 『真夏のオリオン』

映画「真夏のオリオン」オリジナル・サウンドトラックTOHOシネマズ日劇にて『真夏のオリオン』鑑賞。特に観ようと思っていた作品ではなく、たまたま特別観賞券が手に入ったので……という程度でたいした期待もせずに観たわけですが……。
我々はすでに数多くの戦争映画や潜水艦映画を観てきている。その上で提示された映画がこの作品というのはどうなんでしょうか?というのが素直な感想です。


パンフレットの冒頭には『眼下の敵』のような作品を作りたかったと書かれています。本作と同様、駆逐艦と潜水艦の攻防を描いた映画ですが、この名作と本作を比べること自体おこがましい気がします。同じテーマでありながらどうしてここまでの差が生じるのか? それは艦長同士の頭脳戦の描き方が弱いためだと思われます。
『眼下の敵』のような一進一退の駆け引きがあるわけでもなく、ヘタをするとなんの脈絡もなく作戦が決定しているようなイメージすらあります。なんというか……推理小説を読んでいて、最後の3ページになって突然現れる人物が真犯人だったというようなイメージでしょうか。伏線らしい伏線もないまま突然次の行動を突きつけられる。これでは観ている側は共感しようがありません。
そもそも両艦長のうち、特にアメリカ側の艦長の描き方が不十分だと感じました。潜水艦の動きを予測する根拠が全然見えませんでしたし、戦いにおける信念やその熟練度、経験といったものもよくわからず、頭脳戦で潜水艦艦長を超える思考にいたっていない感じしか受けませんでした。これで『眼下の敵』を目指したと言われても……。
また、その戦闘自体も、潜水艦の酸素残量が少ない、潜水深度も限界を超えているという緊張感がまったく伝わってこない。潜水艦という閉ざされた空間の恐怖が感じられない。かつて『Uボート』という映画があり、その密閉空間の緊迫感や水圧による恐怖がとてもリアルに描かれていました。それに比べて本作は……。そもそも、限界深度100mの潜水艦が190mまで潜行して、あの程度で済むとは思えない。その後は、それがなかったかのように普通に行動してましたし……。
冒頭とラストに登場する現代のシーンも中途半端という気がしました。話としてはそれがなければ意味をなさないのかも知れませんが、なくても成り立つ気がします。その点では『男たちの大和/YAMATO』のカットバックの仕方のほうがはるかに上でしたね。この現代のシーンこそ、この映画におけるメッセージがたくされている部分であるのに、結局のところ、両艦長の戦闘を超えた思いが伝わらなかった分、半端なシーンになってしまったといえます。
総合すると……シナリオにそれだけの力がなかったという感じですかね。1950年代の『眼下の敵』に比べれば、そりゃあ映像技術は格段に高いのかも知れませんが、中身では遠く及ばなかったというところですね。
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stars胸熱くなる終盤の展開が素晴らしい
stars傑作!
stars原作よりも素晴らしい作品です。
stars戦争を美化?綺麗すぎて退屈??冗談じゃない!
stars凄い

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