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Vol.270 『エイリアン:コヴェナント』

TOHOシネマズ日本橋にて『エイリアン:コヴェナント』を鑑賞。『プロメテウス』の後の話となる、『エイリアン』シリーズ通算6作目にあたるSF映画。

2000人以上の入植者が冷凍睡眠しているコヴェナント号は惑星オリエガ6を目指していた。その途中、近くの惑星から歌のような信号をキャッチする。その発信源は地球に近い環境と判明し、調査隊をその惑星に派遣することを決定する。植物は自生しているが、動物の気配のないその惑星で、調査隊は信号の発信源である宇宙船を発見。そこには、プロメテウス号の乗組員エリザベス・ショウがこの惑星にきていたことを示す物証があった……。

エイリアン:コヴェナント

多くの謎をはらんだまま、ショウがエンジニアの母星に向うところで終わった『プロメテウス』。その後の話が気になっていた方には待ちに待った続編だと思います。映画の冒頭では、『プロメテウス』に登場したアンドロイドのデヴィッドが作られた直後のシーンが登場し、期待はさらに高まるわけですが……次のシーンで出てきたのはデヴィッド……ではなく、同じ姿形をしたウォルターというアンドロイド。

えっ? ショウの話は? 『プロメテウス』の続きじゃないの?などと戸惑っているうちに今回の話が進んでいきます。そしてその後は、安心の『エイリアン』です。謎の信号に導かれて星にたどりつくと、降り立った者の体内にエイリアンが入り込んで、腹を食いちぎった成長したエイリアンが船の乗組員を次々と殺害していく。このストーリー展開の安心感。これはまさに『エイリアン』だよね、と。

途中、その惑星でデヴィッドが登場したあたりから、『プロメテウス』の後の話が語られますが……『エイリアン3』のときも思ったのですが、前作で活躍したキャラクターを、こうも簡単に捨ててしまうのはいったいなんなんでしょう。シリーズとして観ている観客が望んでいるのは、新しい登場人物ではなく、前作の主人公のその後だと思うのです。もちろん、主人公のその後もデヴィッドの口から語られますが……。

エイリアン:コヴェナント

そして、話としてはさきほども書いた通り『エイリアン』です。つまり、目新しさはまったくありません。さらに言うと、その恐怖感や緊迫感はまったくなく、次の展開もわかっているし、ほんとに安心して観ていられます。

我々はもう、エイリアンがどのように生まれ、どのように成長し、どのように人を襲うのかをよく知っています。だから、その卵を覗くとたいへんなことになるよ、エイリアンを傷つけたらその体液でたいへんだよって知っています。それをあえて映画の中で登場させるからには、何か新しい仕掛けや見せ方をしてくれるのだろう……何もありません。

逆に言うと、これまでのシリーズを一切観たことのない人のほうが楽しめるのではないかという気がしました。エイリアンシリーズを観たことがなければ、次どうなるかもわかりませんし、エイリアンの成長の過程もきっと楽しめるでしょう。

エイリアン:コヴェナント

そして、エイリアンシリーズを観てきた人に用意されていたのは、エイリアンの誕生の秘密ということになります。まあ、本作で語られた誕生秘話がいいかどうかは別の話ではありますし、それが知りたいかどうかもその人によるかと。謎の生物じゃいけないんでしょうか? どこからきたのかわからないけど、圧倒的な強さを持って恐怖の対象となるエイリアン、で私はいいと思いますし、それを映像化しなければいけない理由がよくわかりません。

エイリアンは、その神秘性があってこそ際立つキャラクターだと思います。宇宙船の中に自身の出す分泌物で気味の悪いエリアを作り、その中に潜み、どこから襲ってくるかわからないという恐怖。一人また一人と襲われて犠牲になっていくじわじわ感。本作ではそうしたものがない上、出自まで明らかになってしまったがために、なんだか格下げされたイメージ。

さらにいうと、CGで作られたエイリアンがすごくチープでした。動きは滑らかですし、よく動いているとも思いますが、その動きが明らかに計算式で作られていると見えてしまいます。壁の中からのそーーっと出てくる、あの感じはなく、ゲームキャラのようでしたね。VFXなどの技術が進んでも、新しい技術で撮るからいいというわけではないという典型的な例になりそうです。

エイリアン:コヴェナント

全体的にいうと、『プロメテウス』の続きでありながら、『プロメテウス』は観ていなくてもよく、観ていないからわからないということはありません。もちろん前作のことが語られるシーンやデヴィッドのことなどは、前作を観ていないとわからないこともありますが、それは必須ではないですし、逆に前作を観た者としては、観たかった続きはこれではない感があります。

また、エイリアンシリーズを観てきた人にはいろいろな部分で物足りないところがあるようにも感じます。1作目に出てきたノストロモ号はとても大きく感じましたが、コヴェナント号はそのスケールをまったく感じません。アクションとしても2作目のほうがはるかにすごいですし、エイリアンの神秘性や恐怖感がなくなっている分、がっかりする部分も多いでしょう。

普通なら、シリーズを観てきた人にはオススメなどと書くことが多いですが、あえて書けば、シリーズを観ていない人にはいいかもという感じでしょうか。まあ、シリーズを観ていない人には1・2作目をお勧めしますけどね。

『エイリアン:コヴェナント』は、全国ロードショーです。

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