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Vol.269 『ダンケルク』

TOHOシネマズ日本橋にて『ダンケルク』を鑑賞。クリストファー・ノーラン監督による、第二次世界大戦の実話に基づく戦争映画。

快進撃を続けるドイツ軍はヨーロッパ西部への侵攻を開始する。南への退路を断たれたイギリスおよびフランスの連合軍は、英仏海峡のダンケルクに追い込まれてしまう。イギリスはダンケルクに取り残された40万人にも上る兵士たちの撤退作戦を開始するのだが……。

ダンケルク

この物語はアメリカが参戦する前、フランスが降伏する直前の、イギリスへの撤退作戦が描かれていますが、いわゆる戦争映画的なドンパチで勝った負けたという話にはなっていません。絶望的な状況からどのように脱出するかが3つの視点で描かれています。

1つ目は海岸に追い詰められた兵士、2つ目はイギリス軍に徴用され、兵士を救出に向かう民間船、3つ目は空から支援するパイロットです。この三者が、時間的なスタート地点が異なる地点から並行して描かれていきます。

ダンケルクは遠浅な浜のため、大きな船舶は接岸できません。浜辺には障害もなく、兵士達はドイツ軍戦闘機の恰好の的になるしかないという状況。さらに海にはUボートが待ち構えており、船が海に出てもすぐ撃沈されてしまう。その絶望的な環境に取り残された一兵士と同じ視点に投げ出される観客。

ダンケルク

爆撃で吹き飛ぶ兵士、水がどんどん増えて沈没する船の中の兵士、撃墜され水没する戦闘機のコクピットからの脱出、流れ出た重油に引火した海の中の兵士……CGなどを用いず、実際に撮影した映像で作り出されるこうしたシーンの緊迫感、迫力は目を見張るものがあります。

登場人物のセリフも少なく、その表情と周囲の描写でぐいぐいと押していく。戦争映画ではなく、「究極の映像体験」というキャッチでプッシュする理由はよくわかりました。しかし、逆に言えば、映像の押し売りといったようなイメージもあります。

この映画を観て、リアリティがあるとか、没入感がすごいというようには感じませんでした。実際にダンケルクで撮影したのでしょう。水もCGではないし、戦闘機のコクピットでの主観的な視点もまさに実際の映像でしょう。ただ、それを持ってリアルといえるかというと、私は違うと思うのです。

映画的な演出やVFXというのは、実際の映像をパワーアップし、まさにその場にいるような錯覚を起こさせるために使います。本作ではそうした、いわば偽物が介在しないがために、逆に臨場感が奪われていると感じました。

ダンケルク

もちろんそれぞれのシーンの迫力はあります。戦場にいるかのような息苦しさや緊迫感もすごい。しかし、臨場感があるかというと違います。その最大の要因は音。速いテンポで繰り返されるノイズのようなSEと、それをも含んだBGM。メロディラインも心が落ち込みそうな音と旋律が続き、登場人物がそこにいたくない、離れたいと感じていることがひしひしと伝わってきます。

これは、単なる音による脅迫であり、暴力であり、臨場感ではありません。重い映像とそれをさらに重くする音。映画の前半は特にひどく、耳障りな雑音、それもすごく嫌な音を延々聞かされている感じで、生まれて初めて、途中で映画館を出ようかと思ったくらいです。

ダンケルク

その場で必要な要素だけを描いていることもあって、登場人物の背景はほとんどありませんし、先ほども書きましたがセリフも少ない。さらに、3つの視点を並行して描いているので、その切り替えが頻繁すぎて、少し前のめりになると違うシーンになることの繰り返しで、感情移入ができないということも没入感が得られない理由かと思います。

話自体、撤退作戦なので、終わった後の爽快感もありませんし、戦争映画として描かれていないので、反戦志向のようなメッセージ性もありません。かといってドキュメンタリーでもないので、これはもう、観る人のどこにささるかによって感想は大きく異なると思います。

映像体験ということもあって、テレビサイズではまったく伝わらない映画だとは思いますし、観るなら映画館で観ることをオススメしますが、ドラマ性や戦闘シーンなどを期待していくと肩すかしをくいます。まあ、スピットファイアーやメッサーシュミットの戦闘シーンは見応えありましたが。

ダンケルク

『ダンケルク』は、全国ロードショーです。

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