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Vol.202 『清須会議』

TOHOシネマズ日劇にて『清須会議』を観賞。もう数週間前に観ていたのですが、コラムを書く時間がなかなか取れず、掲載が遅れてしまいました。三谷幸喜さんの原作・脚本・監督作品で、本能寺の変、山崎の合戦後、織田家の後継問題を取り決めた評定・清須会議の5日間を描いた時代劇。
本能寺の変で死去した織田信長と長男・信忠。その跡目を決める評定が柴田勝家提案により行われた。その席は、明智光秀を討ち、勢いに乗る羽柴秀吉と、勝家の信長亡き後の勢力争いの場でもあった……。

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戦国時代を描いたドラマ・映画は数々ありますが、信長から秀吉へと政権が移る過程でとても重要なターニングポイントとなったこの清須会議は、深く取り上げられることがほとんどありませんでした。話として出てきてもさらっと流される感じ。多くは、本能寺の変の後、秀吉が光秀を討ち、後継者として力をつけ、勝家との戦いに勝ったことで実権を握ることになった……というイメージで覚えられているのではないかと思います。
しかし、信長には本能寺で一緒に亡くなった信忠以外にも息子がいるわけで、本来であればその息子たちが後を継いで天下統一を目指したはずなのに、なぜ秀吉が権力を握ることになったのか? その答がこの清須会議なんですよね。
織田家でもっとも力を持っていたはずの勝家はこの会議の後、お市をめとり、織田家ナンバーワンの地位にいたはずなのに、秀吉に敗れてしまう。そこへ至る過程としても、この会議での秀吉の立ち回りが非常に重要な位置をしめています。誰が勝家につき、誰が秀吉につくのか。その踏み絵にもなったと考えます。
ただ、会議ですから、映像化するには華がないというか、合戦シーンが重要な戦国物に入れるのはなかなか難しいモチーフではあります。その点、セリフのやり取りで数多くの名シーンを作ってきた三谷さんのシナリオなら、映像としておもしろいものになるのではないかという期待を持って、今回拝見しました。

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個人的には、少々物足りないというのが本音ですかねぇ。実際の評定までにいたる裏での駆け引きがうまく伝わってこなかったのと、クライマックスでのやり取りの緊迫感の少なさ。もっと魅せてくれるものだという期待が大きすぎたかなという気はするのですが、たぶん原因はそこではなく、三谷さんの思い入れが強すぎたことに起因しているような気がします。
歴史小説・時代劇をよく観る者には、うれしいこだわりが随所に見られます。たとえば光秀が年寄りであったり、丹羽長秀や池田恒興といった、名前は知られているが人物像が描かれることがあまりない武将にきちんとした性格を持たせていたり、それぞれの呼び方が、当時そうであったであろうという呼び方だったりします。
通常のドラマでは秀吉は秀吉、勝家は勝家と名前を呼ぶわけですが、本来であれば筑前であったり、権六といった通称で呼ばれていたはずなんです。犬千代とか日向守とかもそうです。時代小説ではごく当たり前のようにこういう表記になっていますが、映像化作品ではそうはならない。なぜなら観てる人が理解できないから。
だから今回の作品は、そういった点でも歴史を知らないとついていけないですし、この会議に至るまでの流れも、京都御馬揃えや本能寺の変などは出てきますが、たとえば万福丸の話からつながるお市の秀吉への恨みなどはちょっとわかりにくかったのではないかなという気がします。ただ秀吉が嫌いだから勝家の肩を持ったお市、としか捉えられない雰囲気でした。
また、そのキーパーソンとなるお市への思いが前面に出すぎている勝家。評定そっちのけでお市を口説いているという印象でしかなく、この後の力関係を占う大事な会議で、あまりにも間抜けな雰囲気ばかりだったように思います。

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勝家は古い武将ということもありますが、信長の重臣として数々の戦を駆け抜けてきた武将。それが秀吉という、新しいタイプの武将に取って代わられたのは時代の流れかも知れませんが、どうせなら、その差をはっきりと示す描き方だったらよかったのになぁという気はしました。
出演者の話もしておきましょう。今回の作品も三谷作品らしいオールスターキャストという感じで、すごく豪華な顔ぶれですよね。その中で素晴らしいと思ったのは秀吉を演じた大泉洋さん。信長、秀吉、家康といった人物には、それぞれこの人が合っていると思う役者さんがいると思うのですが、これまで観てきた秀吉を演じた方の中で私としては上位に入ってくるはまり方でした。いちばんイメージ通りと思っているのは実は緒方拳さんなのですが、明るさの中に計算高い表情を織り交ぜ、目でそれを演じた大泉さんは期待以上でかなり見直しました。
作品としては、国物をよく観ていて、この会議に至るまでの流れ、人物相関がわかっている方にはオススメしますが、三谷コメディを期待している方にはあまりオススメできないかなという感じです。
『清須会議』は全国東宝系にてロードショー中です。
(C)2013 フジテレビ 東宝
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