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Vol.188 『悪霊島』

悪霊島観賞映画振り返りコラムの66回目は1981年に観た『悪霊島』。友人と二人で日比谷で観たのですが、有楽座だったような気がするんですが……。
鵺の鳴く夜は恐ろしい……謎の言葉を残して死んだ男。それは金田一が探していた男だった。そのダイイングメッセージの示す謎の島へ乗り込む金田一と、三津木という青年。彼らを待っていたのは、秘密を隠し持つ、謎多き刑部家であった。


言わずと知れた、横溝正史さん最後の長編小説の映画化作品。探偵・金田一耕助の話は昭和20年代が舞台になることが多いのですが、最後の事件となる『病院坂の首縊りの家』までの間に入る物語となっています。この映画の完成直後に横溝さんは亡くなったわけですが、この後、毎年1本は長編を書くという話が伝わっていただけに残念でした。
話としては、典型的な横溝ワールドともいうべき、家系にまつわるどろどろとした因縁を主体とした物語。それほど時間は経っていないにも関わらず、久しぶりに横溝正史さんらしい作品を観たなぁという気がしました。推理小説としてみたときには、途中でだいたいわかってしまう感じはしましたが。
この物語で金田一が出会う三津木という青年の回顧録のように話が進むわけですが、この作品の前年に起きたジョン・レノン暗殺ニュースから昭和40年代へと話が戻る冒頭シーンはわりと秀逸だったと思います。ヒッピー姿の三津木、バックに流れるビートルズの「ゲット・バック」……一瞬にしてその当時の情景に観客の心を引き戻す効果は抜群だったのではないでしょうか。
金田一役には鹿賀丈史さんが抜擢され、わりと賛否両論あったように思うのですが、私は特に違和感を感じませんでした。ぴったりはまっているかというとそうとも思えませんでしたが、鹿賀さんはありだと思いましたね。
この作品でもっとも評価したいのは、なんといっても岩下志麻さんの演技でしょう。横溝映画と言えば女優の演技が見どころの一つなわけですが、この作品は妖絶、かつ、鬼気迫る演技を披露しています。途中、オナニーシーンまで出てくるわけですが、これは夫である篠田監督だからこそ引き出せた演技ではないかという気がします。この岩下さんの演技力があって、この作品が成り立ったと言っても過言ではありません。
あと特筆すべきは、主題歌もビートルズだったという点でしょうか。「レット・イット・ビー」がはたして横溝作品に合うのか?という疑問はありましたが、非常によくはまっていたように思います。逆に、いま「レット・イット・ビー」を聞くと『悪霊島』を思い出す感じです。
ただ、このビートルズの起用によって、ソフト発売に影響が出たというのがちょっと残念。楽曲の使用権がそうしたところに影響を及ぼし、オリジナルのまま観ることができなくなるというのは、せっかくの作品が別のものになってしまうことになりますし。
横溝正史さんの作品が好きな方は一度は観ておくべき映画だと思いますし、個人的にはこれが正統な作品としては最後の作品というように感じています。
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