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Vol.171 『天国の門』

天国の門観賞映画振り返りコラムの64回目は1981年に観た『天国の門』。友人と二人でテアトル東京で鑑賞。テアトル東京はこの作品を最後に閉館しました。
『ディア・ハンター』でアカデミー賞を受賞したマイケル・チミノ監督が次に選んだ題材はジョンソン郡戦争と呼ばれる、移民弾圧の事件。これはひどかった。何がひどかったかというと、メディアでの取り上げられ方、紹介の仕方です。公開前からネガティブな紹介ばかりされた映画は、私が覚えている限りこの作品ぐらい。好意的に思える紹介はほとんどなかったように記憶しています。


チミノ監督のこだわりから製作費がどんどん膨らみ、当初予定していた額の4倍にも達したこの作品。アメリカでは前年に公開されましたが、公開前から批評家の間でいい反応がなく、219分を2時間半ほどに短縮して公開。それでも観客は入らず大赤字となり、最終的にユナイテッド・アーティスツの経営破綻の一因となりました。
そのことは確かに事実ではあるのですが、公開前の作品を紹介するときに枕詞のように並べる必要があったのかどうかについては疑問を持ちました。どの記事もまず『ディア・ハンター』のアカデミー賞監督の問題作というようなあおりで入り、アメリカで不評だった完全版を再編集した短縮版で公開、というような紹介の仕方でした。短縮版になった分よくなっているというようなフォローをしてるところもありましたが、フォローになってない感じ……。
映画がいいか悪いか、おもしろいかおもしろくないかというのは、観る人の主観や環境、嗜好によるものが大きいわけで、観客は観てからその人なりに判断すべきものだと私は考えます。それをメディアが公開前から「アメリカで失敗した作品」というレッテルを貼るというのはどうなんだろうという気がしたのと、どの記事を見てもほぼ同じ紹介をしていて、この映画を本当に観て書いたのだろうか?とも感じましたね。
で、実際に観た感想としては、それほど叩かれるような映画には思えませんでした。もちろん、これは名作だというふうにも思いませんでしたが、そんなネガティブキャンペーンを張られるような作品かというとそれほどでもないというか。実際、アメリカ以外での興行では、ヨーロッパなどではそれほど悪くない評価を得ています。ではなぜアメリカでこれだけ叩かれたのか?
Vol.82 『ディア・ハンター』のときに私は『ディア・ハンター』のことを問題作と書きました。名作ではあるが、その切り込み方がストレートすぎてる感があったからです。アカデミー賞作品でこれほど賛否両論だった作品も少ないと思います。この『天国の門』ではチミノ監督はさらに踏み込みすぎてしまったがために叩かれたのではないかという気がします。予算超過は桁違いの数字ではありますが問題はそこではなく、アメリカ人として触れられたくないところを立て続けに突きつけてきたチミノ監督への反発というのが大きいかと。
社会問題にもなったベトナム戦争に続いて撮ったのが、移民弾圧事件という、触られたくないジョンソン郡戦争。実際その戦闘シーンの残酷さは、その歴史を知らない日本人の私ですら「うっ」となるような迫力とリアリティがあり、当事者であるアメリカ人にはつらいだろうなぁという印象がありました。
映画の長さについては、短縮版の2時間半を観たわけですが、全体として長いとは感じませんでした。しかし、すべてが本当に必要かというとそうとは思えません。『ディア・ハンター』も冗長な感じがありましたが、この作品ではそれをさらに感じました。この映画の前半では大学の卒業式が描かれるのですが、その映像の美しさや明るい雰囲気は後半の戦争シーンと対比させるためのシーン。なのでまったく意味がないわけでもなく、必要だとは思うのですが必要な長さかというと疑問です。
『ディア・ハンター』でも冒頭に結婚式のシーンがあり、出征前の幸せと戦争や帰還後を比較するような作りになっていて、それこそチミノ監督の持ち味なのだという気はするのですが、やはり冗長な感じがありました。同じようなことをしている映画として『ゴッド・ファーザー』がありますが、コッポラ監督の演出に比べてチミノ監督の演出のほうがたいくつに感じるのはなぜでしょう?
そこは、そのシーンが後半にどう活かされるのかという計算のあるなしという気がします。『ゴッド・ファーザー』の結婚式は後半との対比というだけでなく、あのシーン中に複雑で理解しづらいマフィアファミリーの構成であったり人間関係であったりというものをうまくまとめて紹介しています。『ディア・ハンター』もそれに近い構成になっていました。ところが『天国の門』はそこまでいたっていない。だからよけいに長く感じてしまうんでしょう。
また短縮版にも関わらず、中盤に中だるみをしてしまっているようにも感じられました。描きたいテーマに対して、その周囲まですべて入れるという意気込みだとは思うのですが、映画である以上、キャストを少し削ってでもその映画のテーマに注力すべきだと思います。そうした部分をきちんと整理したらもっといい映画になったんじゃないかなぁ。なんというか、大河ドラマの総集編を中途半端な長さで観させられた、そんな印象の映画でした。
出演者はクリス・クリストファーソン、クリストファー・ウォーケン、ジョン・ハート、ジェフ・ブリッジス、ジョセフ・コットン、ミッキー・ロークといった豪華な顔ぶれ。これだけのメンバーを揃えた西部劇というか歴史物はなかなか観られません。内容も決して悪い作品ではありません。それだけに、企画やシナリオ段階でもっと練り込んでいればよかったのにという点が残念でなりません。
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