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Vol.91 『2001年宇宙の旅』

2001年宇宙の旅観賞映画振り返りコラムの35回目は1980年に観た『2001年宇宙の旅』。映画自体は1968年初公開の作品ですが、SF映画の話となると必ず名作としてタイトルが上がる作品だったので機会があればと考えていたところ、リバイバル上映をしていたので観に行きました。映画館はテアトル東京。
アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリック監督によるストーリーをクラークは小説にし、キューブリックが映画にした作品。クラークはこの後、3本の続編を執筆しており、そのうち『2010年』は1984年に映画化されています。


この映画のすごいところは、まだ人類が月に到達していない時代、もちろんスペースシャトルなどない時代に、これだけリアリティあふれる宇宙の映像を作ったというのがいちばんの功績だと思います。軌道上にある宇宙ステーション、そこにいたるシャトル、この映画の鍵となるモノリスが発見された月面、そして木星への旅……。1980年には実際の映像としての宇宙を観ていますが、それと比較しても嘘っぽさがまったく感じられないのがすごい。
また、この頃のSF映画によって開発された技術、たとえばモーションコントロールカメラなどになりますが、そういったものがまったくない時代によくここまでの映像が作れたなぁとつくづく感心するとともに、このシーンはどうやって撮ったんだろう?と思う映像がたくさんありました。
シャトルの中で人間が逆さまになっていくといったシーンなどはカメラを回転させて撮ればできるというのはわかります。しかし、シャトルで宇宙ステーションに向かうシーンでボールペンが回転しながら宙を舞うのですが、それをCAが手にとって客の胸ポケットにさします。このシーンがどうしてもわからなかったですね。ピアノ線でつっていたらああいう回転はできないしなぁと。これは『2010年』のメイキングを観て初めて撮影方法がわかりましたが、それまで自分の中では大きな謎でした。
あとラストシーン直前の映像も圧巻でしたね。もちろんCGなどはない時代ですし、どうやって撮ったのか不思議でした。このシーンのためにスリットスキャンという撮影方法が考案されたり、他にもフロントプロジェクションを初めて使ったりと、SF映画の撮影において革命的なことを多々生み出しています。
ストーリーは人工知能であるHAL 9000の暴走という部分が話の中でいちばん盛り上がりますが、人類の祖先を描いた導入部分からラストシーンまでキーとなるところで登場する謎の石版・モノリスの存在が最大のメッセージとなっています。
このモノリスは1:4:9の比率の黒い石版。その意味も具体的な説明もなく、人類を導く物、あるいは進化を促す物のように描かれてはいますが、まるで意志を持ったような登場をするわりにはそれ自体が何かをするというような描写はなく、その答は観た人にゆだねられています。ラストのスリットスキャンによる映像とともに、強烈な印象だけを残し、多くを語らない。
スピルバーグがインタビューで「キューブリックの作品は一目見ただけですぐわかる」と言っていたことがありますが、その独特のカメラワーク、色彩、そしてメッセージ性は記憶の中に強烈に残るものが多く、この『2001年宇宙の旅』も、一度観たら決して色あせることなく観た人の心に焼き付けられる作品です。
→『2001年宇宙の旅』の記事を探す
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おすすめ平均
stars古い…が面白い。純粋に秀作SF映画。
stars現時点で最高の2010年ですね
stars音と画像をレビューします。
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