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Vol.83 『影武者』

影武者観賞映画振り返りコラムの32回目は1980年公開の『影武者』。先日書いた『ディア・ハンター』と同じ日に錦糸町へ移動後、江東劇場で観賞。2作品合わせて6時間(^_^;)
言わずと知れた黒澤明監督の時代劇で、武田信玄の影武者となった盗人の半生を描いています。撮影時にはいろいろとトラブルがあり、完成が危ぶまれたこともありましたが、「クロサワの映画が未完成になるなんてありえない」と、フランシス・コッポラとジョージ・ルーカスの援助もあり、無事公開されました。


黒澤監督の時代劇は数々ありますが、実際の歴史、実在の人物を取り扱ったのはこの『影武者』が唯一の作品となります。それだけに、その史実などを踏まえた映像を黒澤監督がどのように表現するのかがとても気になっていました。見終わった後の感想としては、そのスケール感がやはり他の監督とは違いましたし、圧倒されたというのが本音でしょうか。
特にクライマックスとなる長篠合戦がすばらしかったと思います。もちろんこれまでにも様々な形で映像化されてきた戦いではありますが、その迫力、その場の空気、広大なスケール、どれをとってみても観たことがない映像。これが“世界の黒澤”と呼ばれる方の力なんだと感じました。この作品を観るまで1本も黒澤作品を観たことがなかったので、余計にそう思ったのかも知れません。
その風貌から信玄の影武者となった盗人。その信玄の死によって、敵はおろか、味方まで騙さざるを得なくなってしまう……そのとまどいと恐れ、プレッシャーの中、これまでの人生ではなかった家、家族というものを得たとき、その盗人の心境に変化が現れる……。
その心の変化や葛藤を見事に描ききったことは、影武者であることがバレて屋敷を追放されるシーンと、草むらから長篠合戦の様子を見ているシーンでよくわかります。このとき観客は、もはや盗人と同じ心境になっているのではないでしょうか。
長篠合戦シーンの演出について冗長であるという人もいますが、武田家が滅亡へのターニングポイントとして迎えた大合戦を、ついこないだまでその頭領であった影武者が第三者として目の前で見ているときの心情の動きを表すにはあのぐらい必要だと私は思います。だからこそ影武者の行動にも共感できるわけですね。
この作品の主役は勝新太郎さんが努める予定であったものが途中で降板となり、仲代達矢さんに代わりました。勝さんの『影武者』も観てみたかった気がしますが、仲代さんの演技はすばらしかったと思います。ラストシーンは特に、取り憑かれたのような迫力が伝わってきました。
この『影武者』を観るまで、邦画はそのスケールなどでハリウッドにかなわないと思っていましたが、監督が違うだけでこれだけの作品が作れるのかと、監督の力というものが映画にどれだけのその映画の出来に影響を及ぼすのかを改めて感じた作品です。
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おすすめ平均
stars完全なるフィクションなのだが・・・
starsおもしろ過ぎる!
starsわくわくする
starsもの凄く奥の深い作品でした。
stars惜しいところ。

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