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Vol.79 『地獄の黙示録』

地獄の黙示録観賞映画振り返りコラムの29回目は1980年公開の『地獄の黙示録』。公開時、35mm版と70mm版でラストシーンが違い、テアトル東京の70mm版と有楽座の35mm版で迷ったのですが、先行上映となった有楽座の35mm版を観ました。拡大上映までの間は全席指定での上映でした。これは父と弟の3人で観た映画。
DVDジャケットになっているのはVol.37 『007/私を愛したスパイ』のときに書いたボブ・ピークのイラスト。光の表現などを見るとボブ・ピーク独特のタッチではありますが、それまで見ていたイラストとはかなり画風が違い、その迫力に圧倒された記憶があります。映画を観終わった後、なぜモチーフがドラン橋のシーンなのだろう?と思いましたが、この映画に潜む闇をクローズアップさせるためのモチーフ選びなのかなという気がします。


この『地獄の黙示録』はベトナム戦争を描いたフランシス・フォード・コッポラ監督の超大作になりますが、その徹底した完璧主義、撮影トラブルなどもあり、一時完成が危ぶまれた時期もありました。銃弾と死体以外はすべて本物というふれこみがありましたが、まさに本当の戦場にいるかのような迫力。主役のウィラード大尉をオファーされたスティーブ・マックィーンがその苛烈なロケ現場を知って辞退したという話もあります。
ベトナムで軍の命令に従わず暴走した元グリーンベレーのカーツ大佐。その暗殺命令を受けたウィラード大尉は哨戒艇で川をさかのぼり、カーツが支配している地帯へ向かう。その間に出会う狂気の戦場。ナパームでベトコンの村を掃討する部隊、ジャングルに光り輝くプレイメイトの慰安訪問、指揮系統もわからない状態で戦うアメリカ軍兵士達、神のごとく崇拝されているカーツ……。
この映画のすごいところは、その映像によって戦争の狂気を見せつけ、ベトナム戦争がもたらした闇を観客に疑似体験させているところです。この頃ありがちだった反戦映画ではその残虐性や戦争の意味といったものを映像やセリフを用いて解説するといったアプローチがほとんどでしたが、今作はそういったメッセージは直接伝えず、観客にその答をゆだねています。それも強烈なインパクトとともに。
「ワルキューレの騎行」をBGMにした有名な戦闘シーン。ロバート・デュバルが演じるキルゴア中佐がサーフィン目的でベトコンの潜む村をヘリコプターで襲撃するこのシーンでは、通常では非戦闘員ともいうべき子どもですら、手榴弾を車に投げ入れるといった衝撃的な映像で描かれています。ヒトラーの好きだったワーグナーをBGMに、最終的にはナパームであたり一帯を焼き払うキルゴアの行為は正しい行いなのか?
マーロン・ブランドが演じたカーツ大佐。軍の命令を無視し、ベトナムよりさらに上流となるカンボジアで自らの王国を築き君臨しているカーツという人物に迫るため、その資料を読むウィラード。そこから導き出されるカーツの思想と、それに惹かれ始めているウィラード。果たしてカーツは悪なのか?
指揮官も命令もわからず戦う兵士。闇の中、どこから襲ってくるかわからないベトコンの息づかい。照明弾と銃弾が飛び交うだけの狂気の戦場。光り輝くプレイメイトのステージに熱狂するアメリカ兵士と金網ごしに遠巻きにそれを見るベトナム人。ドアーズの「The End」をBGMにした強烈なラストシーン……。
戦争に内包された狂気を徹底的に描くことにより、冷戦という社会構造の中で分断された南北ベトナムの内戦ともいうべきベトナム戦争に介入したアメリカの正義とはなんなのかという疑問を提示したこの作品は、他の戦争映画とは一線を画した衝撃作です。
2001年にはコッポラが再編集し、未公開シーンなどを追加、50分も長い『地獄の黙示録 特別完全版』が公開されていますが、追加したシーンのどれも本当に必要かというとなんとも言えず、個人的にはただ冗長になっただけという印象があります。両作品ともDVDは買いましたが、1980年公開版のほうが断然いいと思います。
そういえば特別完全版が公開されたとき、映画評論家と名乗る人たちの何人かが「この映画初めて観ました」などと書いているのを読んだり、さもすごい発見のように「この映画、ハリソン・フォードが出ています」とか書いているのを読んで、がっかりした記憶があります。
ハリソン・フォードのことにしたって、公開当時にすでに広く知れ渡ってたことですし、出演した本人すら公開されるまで忘れてたというような端役でしかないのに、そんな大げさに書き立てるようなことじゃないんですけどねぇ。過去の作品も観ず、目の前にある映画だけで評論とか言えるってすごいですよね。自ら「その道のプロではありません」と宣言している、そんなふうに思えます。
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