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Vol.63 『ラスト・シューティスト』

ラスト・シューティスト観賞映画振り返りコラムの21回目は1979年公開の『ラスト・シューティスト』。有楽座で一人で観ました。
デュークことジョン・ウェインの遺作となったこの作品は、数年前に撮影されていたにも関わらずなかなか公開されず、彼が亡くなった直後にまるで亡くなるのを待っていたかのように公開されました。
20世紀最初の年である1901年、老ガンマンが知人の医者のもとを訪れ、診断してもらった結果、末期ガンだと判明する。その街で静かな最期を迎えようとするが、名の通ったそのガンマンを狙うやつらが現れる……。


映画の冒頭、ジョン・ウェイン出演映画の名シーンが流れ、そしてガンで死を目前にした老ガンマンという設定。自身も死期が近いことを知っていたウェインが、その遺作として選んだこの映画はまさにウェイン自身の人生そのものといってもいいかも知れません。
ベトナム戦争以降、正義という言葉に自信を失ったアメリカ。何が正義で、何が悪なのか? これまでしてきたことははたして正義だったのか? そうした不安は映画の世界にも現れ、「アメリカ軍=正義」、「ドイツ軍=悪」といった戦争映画が少なくなり、さらに純然たるヒーロー然とした保安官が登場する西部劇もほぼ姿を消しつつあった時代。
『明日に向かって撃て!』『小さな巨人』といった、それまでとはまったく違う新しい形の西部劇が登場した1970年代。ジョン・ウェインの死は、そうした時代の流れに一旦終止符を打ち、新しい時代へバトンタッチする、一つのターニングポイントであったような気がします。
この『ラスト・シューティスト』はその意味でも、それまでの西部劇というジャンルそのものに終わりを告げるために生まれた作品と言えるかも知れません。老ガンマンJ.B.ブックスはジョン・ウェイン自身であり、かつまた、西部劇そのものであったのだと思います。
数々の名作をありがとう、ジョン・ウェイン!
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