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Vol.223 『フューリー』

TOHOシネマズ日劇にて『フューリー』を観賞。今年は『永遠の0』から始まって、最後に観る映画として選んだのがまた戦争映画というのがなんとも不思議。とりたてて戦争映画ばかり観ているわけではないんですけどね。
今作は、ブラッド・ピット主演の、第二次世界大戦末期のヨーロッパ戦線を描いた作品。アフリカ戦線から戦い続けてきたシャーマン戦車。ウォーダディーの名で知られるコリアー軍曹が指揮するこの戦車は、激戦の中、部下が一人戦死する。その補充要員として送り込まれてきたのは、事務を志望して入隊した、新兵のノーマンだった。これまでの日常ではありえない戦場の修羅場を経て、ノーマンは兵士として成長していく。その先に待ち受けていたのは、ドイツ武装SS大隊との勝ち目のない戦いだった……。

フューリー


実際の戦場は見たことがありません。銃弾が飛び交う音、その空気も知りません。当然のことながら、リアルという言葉を使えるような経験は持ち合わせていません。この作品に対して「リアルだ」というレビューなどを読むたびに、とても薄っぺらな印象を感じていました。しかし、この作品から漂う現実感はひしひしと伝わってきます。70年前、こうした現実が本当にあったのだという疑似体験と言えばいいでしょうか。
本物のシャーマン戦車、そして、世界最強と言われたティーガー戦車を使い、描かれたこの映画。誰もヒーローではなく、誰も劇的な死に方をするわけでもなく、戦場における生と死が、あまりいい言い方ではありませんが、淡々と描かれていく。そこにあるのは、戦場という名の現実。
事務志望で入隊し、凄惨な戦場も知らず、老人や子供まで投入するドイツ軍に対して特別な感情を持っていなかったノーマンの体験を通して、観客もその戦車に乗って戦場へ赴いているような感覚にとらわれます。それは、ノーマンへ感情移入しやすいプロットの組み立て方が絶妙なんですよね。
子供だからと油断しての失敗、戦場で巡り会った女性とのつかの間の安息、勝つためには容赦のない攻撃を仕掛けるSSへの憎悪。これらが、自分で経験しているかように感じられるのはシナリオのうまさと、演出の良さだと思います。そして、最前線となる十字路の確保という命令においても、誰の目にも無謀な戦いであることは明白なのに、そこで5人で戦うことを選ぶのが当たり前のように感じてしまう。まんまと監督の術中にはまった感じでした。

フューリー

さて、先ほども書きましたが、この映画には本物のシャーマンとティーガーが登場します。ティーガー1台に対してシャーマン3台の戦車戦。このシーンはすごかった。これまでもいろいろな映画で戦車の戦闘シーンを観てきましたが、この映画で描かれた戦いは迫力、そして臨場感がまったく違います。
「ドイツ軍の戦車は化け物か!」というくらい圧倒的な強さを誇るティーガー。この映画のために、現在、唯一動的保存されている実車を投入しています。それがシャーマン3台相手に大立ち回りをする。この映像だけでミリタリーファンは大満足なんじゃないでしょうか。私自身、このシーンを観られただけで映画代を払った価値があったと感じています。

フューリー

余談ですが、ティーガーって、昔はタイガー戦車と呼ばれてましたよね。プラモデルの主力が戦艦や戦闘機、戦車だった時代の方にはタイガーという表記のほうがしっくりくるかも知れません。
それはさておき、この作品。一口で言えば『Uボート』の戦車版と言ってもいいかも知れませんが、それぞれの兵士のバックグラウンドを引っ張り出さずにこの作品の中だけで完結する人間ドラマ、そして、兵士としての成長物語としては秀逸だと思います。昨今の反戦色が強い戦争映画とは一線を画しながら、それでいて戦争の無常感をきちんと描いている秀作です。
『フューリー』は現在公開中です。

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