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Vol.222 『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』

関係者試写にて『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』を観賞。会場は東劇。唯一の試写ということで、マスコミだけではなく、多くの関係者が来場していました。受付も、メディア受付は人がまばらなのに、関係者受付は大行列。私の2つ後ろの席では庵野秀明さんが鑑賞していました。
今作はTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』の完全新作劇場版。これまでのヤマトシリーズで描かれたことのなかった、イスカンダルから地球への帰途で遭遇した、新たなる戦いを描いています。敵はTVシリーズでもガミラスと戦っていたガトランティス。それから、ドメルとの死闘・七色星団での戦いで生き残り、ヤマトへの復讐を誓うバーガー少佐。一刻も早く地球へ帰りたいヤマトが迷いこむ薄鈍色の異空間を舞台に、三者の思いが交錯する……。

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟


まったくのオリジナルストーリーなので、どのような展開になるのかワクワクしながら観たわけですが、冒頭から森功至さんの出演で驚き、葉加瀬太郎さんのバイオリンによるオープニングへと続きます。このオープニング、TVシリーズの物語が矢継ぎ早に登場するように編集されていて、この物語の導入部になっているだけでなく、今作に関連するエピソードがきちんと語られる内容になっています。単なるダイジェストではありませんので、じっくりと観てもらいたいですね。
その次にいよいよガトランティスの大都督ダガームが登場するのですが、ここのBGMがすばらしかったです。打楽器を中心にした、まったくの新曲なのに、きちんとガトランティス関連のBGMとわかる曲になってました……ちょっと話がマニアックすぎる感じになってきたので軌道修正します。

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

『宇宙戦艦ヤマト2199』では、旧ヤマトシリーズの矛盾する点などを筋の通る内容に置き換えながら、オリジナルの内容を追加する構成となっていました。今作はというと、私には、この後の物語への橋渡しとしての役目と、その矛盾点の解消というのが一つの目的だったのではないかという気がしています。
人類が初めて接触した異星人ガミラスとの戦いが2190年代。ヤマトが地球に帰還するのは2200年です。旧シリーズではこの後2201年~2203年あたりで次々と違う異星人の攻撃を受けます。それまで出会ったことがなかったのに、毎年のように異星人がくるというのは違和感を感じますよね。
TVシリーズにガトランティスが登場したのも、その違和感を解消するための措置だったのではないかと思っていたのですが、今作ではさらに突っ込んで、地球VSガトランティスが、このすぐ後にあっても不思議ではない形になりました。

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

さらに言うと、旧作『宇宙戦艦ヤマト』と『さらば宇宙戦艦ヤマト』における、古代進の立場について少し違和感を持っていました。『宇宙戦艦ヤマト』で戦闘班長だった古代は航海の途中で艦長代理に任命されます。『さらば宇宙戦艦ヤマト』でもそのまま艦長代理としての立場から始まりますが、それ相応の働きを経てその立場になったような気がしなかったのです。
『宇宙戦艦ヤマト2199』においては、副長としての真田さんがいますし、古代はどのようにしてヤマトを指揮する立場に至るのかがどうも見えていませんでした。しかし、今作は、その道筋を作ることを含めた、いわば、古代の成長の仕上げとしての物語として作られたのではないでしょうか。
ガトランティスからの攻撃を受けた際の古代の指揮を見守る、兄としての真田。最終決戦を満足そうに艦長室で見つめる、父としての沖田。この二人が口を出すことなく、ヤマトを統率していく古代の姿は、TVシリーズから一歩も二歩も成長し、この後、ヤマトの中心として活躍していくであろう古代進を想像させることを容易にした、そんな気がします。
この後の物語があるのかどうかはわかりませんが、その時、艦長代理や艦長を務めていてもなんら違和感を感じないキャラクターとして描き切った。それが今作の最大の収穫かなと思います。

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

というか、これだけ壮大な前振りをして、続きがないとは思っていませんw 今回の制作がかなり厳しい状況というのは噂では聞いていましたし、携わったスタッフの方々もたいへん苦労されたと思います。試写前のプロデューサー挨拶では、言葉が出なくなってしまうくらい、この作品の完成までの道筋は困難があったのだと思いますが、そこここに散りばめられた次への布石を見る限り、当然、いつか続きが作られるという期待をしてしまいます。
斎藤始やサーベラーといった『さらば宇宙戦艦ヤマト』のキャラクターの登場、そして、ガトランティスの大帝ズォーダーの名前がセリフの中に聞こえたとき、もう続きは絶対あると確信しましたね。試写の案内にも「2199年【の】物語の結末として制作された」と書かれていましたし、2200年以降の物語を待ちたいと思います。
蛇足ですが、この映画の中に一枚の肖像画が出てくるのですが、これを描いたのは末弥純さんなんですね。映画を観ているときに、すごく存在感のある絵だなぁと思っていたのですが、そうした方が参加されているのもすごいなと思いました。
『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』は、12月6日(土)から全国ロードショーです。

©西崎義展/2014 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
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