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Vol.220 『ドラキュラZERO』

TOHOシネマズ錦糸町にて『ドラキュラZERO』を観賞。吸血鬼ドラキュラの元となった実在の人物、トランシルバニアの君主ヴラド3世の史実をベースに、ヴァンパイア伝説を巧みに織り交ぜて作られた、ドラキュラ誕生の物語。通常、ドラキュラといえばホラーですが、どちらかというと歴史物に近く、しかしながらフィクションなのでジャンルはファンタジー(ダークファンタジー)に分類しておきます。
強大な力でその支配を拡げるオスマン帝国。周囲の国としてトランシルバニアには、膨大な貢納金に加え、暗殺者へ育てるための子供1000人を要求する。トランシルバニアの君主ヴラドは、これを断るが、オスマン帝国に対抗する力を持たない。ヴラドは愛する国・家族を守るため、悪魔と契約し、その力を得ようとする……。

ドラキュラZERO


串刺し王として知られる王ヴラドが、その残虐性からドラキュラのモデルとなったいう話や、オスマン帝国との戦いで一歩も引けを取らなかったという話は前々から知っていましたが、そのヴラドを題材にした映画ということで興味津々。実際のヴラドはかなり残虐な人物としてしか知られていないので、どういう物語になるのかなと思っていました。
しかし、この作品では、そのヴラドを家族や国を思う素晴らしい人物として描き、ともすれば、オスマン帝国との死闘がメインになりそうな話を、その厚みを持った人物像と人間ドラマをもって、激しく、優しく、そして切ない歴史物語に変えています。
先代ヴァンパイアの血を飲み、超人的な力を得たヴラド。3日間、人間を血を吸わなければ元の人間に戻れるが、その血への渇望と戦わなければならない様子の描写が見事。人とヴァンパイアの間で揺れ動く心。人であろうとするがために周りの者へ対する苦悩。観ている者まで息苦しくなってくるような内面へのアプローチがとても素晴らしかったと思います。
映画の売り方としては、ドラキュラの知られざる物語、あるいは、そのVFXアクションなどといった、どちらかというと派手な要素を前面に出さざるを得ないとは思いますが、それを超える人間ドラマが楽しめる作品です。

ドラキュラZERO

VFXももちろんよくできてました。ヴァンパイアの力を得たヴラドがオスマン軍1000人を全滅させるあたりは、もうコーエーテクモあたりが「ドラキュラ無双」としてゲームを出してもおかしくないレベル。作品内の強弱のメリハリをつけるシーンとしてもかなり効果が高いですし、まさに壮大な戦いという感じです。
全体の流れに破綻もなく、テンポよく進むストーリー、アクション、そして人間ドラマと、見せ場たっぷりの1時間半。ドラキュラというだけで敬遠する方もいるかも知れませんが、観て損はない映画だと思います。
『ドラキュラZERO』は、全国ロードショー中です。

配給:東宝東和
『ドラキュラZERO』
全国ロードショ―中
©Universal Pictures