Vol.213 『GODZILLA ゴジラ』

TOHOシネマズ日本橋にて『GODZILLA ゴジラ』を観賞。この映画館、ある映画の完成披露試写に行ったときに満席で入れず（結局その映画は観ずじまい）、TCXやドルビーアトモスといったシステムが気になっていたので、ゴジラはここで3Dで観ると決めてました。TCXはともかく、音響はかなりいいですね。イマジカの試写室なみによかった。

それはともかくとして『GODZILLA ゴジラ』。2004年に公開された『ゴジラ FINAL WARS』から早10年。日本のゴジラ映画ではありませんが、ゴジラファンとしては待ちに待った作品ですね。生誕60周年にはきっと復活してくれるだろうと思ってはいましたが、東日本大震災があり、あのとき、もうゴジラは作れないのではないかという気持ちもしてました。逆に、ゴジラ映画が普通に公開されるその時こそ、震災から立ち直ったと言えるのだろうなぁと思ってました。そういった意味では、個人的にはまだゴジラ映画は早いという気がしています。
さて、作品のほうですが、アメリカで作られたゴジラは、はたしてゴジラなのだろうか？という懐疑心をもって臨みました。製作発表されてから、徐々にその輪郭があらわれ、予告編が進むうち、これはゴジラといえないという雰囲気が私の中で漂ってました。フォルムや声が出てきたときには、ひょっとして観ちゃいけないのか？とも……。
実際のところは、しっかりとした怪獣映画になってました。予算も時間も、そのかけ方が違うハリウッドの映画ですから、それ相応のグラフィックや迫力があるのは当たり前。しかし、怪獣映画となると、それだけではダメなんですよね。怪獣を怪獣として、畏怖の念をもって作らないといけない。これはアメリカ人には難しいことなんだと思います。
だから、怪獣ではなくモンスターになってしまったり、あるいは、生物として扱ってしまったりする。向こうではそれでいいのかも知れませんが、生まれたときから怪獣がいる世界で過ごしてきた日本人には、それは怪獣ではないという感覚になります。が、この映画はきちんと、怪獣になってました。そこは評価すべき点です。

初めてゴジラの全形が現れ、吠えるシーンでは、キング・オブ・モンスターたる堂々とした風格が感じられ、ゴジラが帰ってきた！と体感できる名シーンになっていました。ただ、風格がありすぎて、こう、なんていいましょうか。“おっさん”にしか見えなくなってくる……。人によってはメタボゴジラなんて言い方をしている方もいるようですが、それだけでなく、動きとか、しぐさとか、どうもおじさんくさいｗ
凶悪という感じもあまりしませんでしたし、恐怖の対象としてのゴジラはそこにはいませんでした。映画館から出たときに街を見上げると、そこにゴジラがいるような、そんな感覚にとらわれる映画を期待したのですが、そういうイメージではなかったですね。
もう一体、ムートーという新怪獣が出るという話は前々から伝わってましたし、予告編にも登場してますが、どちらかというとそのムートーのほうが怪獣としては主役というか。主役といっても、ゴジラの前にはどうしたって見劣りしてしまうわけですが。それにしてもなぜこのムートーは公開までひた隠しにされたんでしょう。公式サイトでも触れられてませんし、メディア向けの画像素材にもその写真はありません。知らないほうが楽しめるということなんでしょうが、ゴジラの映画だと思って観に行ったらムートーの映画だったという感じがするので、ちょっとずるいなぁという気はしましたね。

話としては、ビキニの水爆実験、日本の原発、ハワイ、ベガス、サンフランシスコと、太平洋をまたにかけた展開となるわけですが、ハワイでゴジラが登場するまでが長い。怪獣映画とはいえ、登場人物が必要なのはわかりますが、どうにもまどろっこしい。しかも、対ゴジラという感じではないので、ここまで掘り下げる、ひっぱる必要はないと感じました。まあ、怪獣が暴れるだけでは映画として成り立たないのだとは思いますが、だったら対ゴジラという形の人物たちにまとめられなかったのかなという疑問は残ります。
全体的には、久々にしっかりとした怪獣映画を観たという感想ではありますし、ゴジラはやはりゴジラとしての風格があります。が、観終わった後、これは平成ガメラであり、ゴジラ映画ではなかったというのが素直な感想です。怪獣映画が好きな方はぜひ観ておくべきだと思いますが、過度な期待を持って臨まないほうがいいかも知れません。

『GODZILLA ゴジラ』は、全国東宝系にて上映中です。
©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
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